投稿日:2017/06/06
株式会社マルトクでは、年齢を重ねても、ご自分の足でしっかり歩ける生活を送っていただくことを願っています。しかし、高齢になると、様々な原因により歩きにくくなる方が多くおられるのも実情です。
そこで「歩きにくさ」の原因となる病気・障害についての基礎知識をお伝えしてきます。正しい知識を身につけることにより、たとえ病気や障害を持っても、適切に対処をし、イキイキと生活・人生を送っていきましょう。
第一弾は『パーキンソン病』です。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、1817年に、イギリス人の医師ジェームズ・パーキンソンという人によって初めて報告されました。
治療法が確立されていない「難病」といわれる病気の一つです。この病気では、脳の中の神経に異常が起こります。脳の中心部(脳幹)にある、中脳の黒質という部分で神経細胞が変性し、ドーパミンという神経伝達物質が少なくなることが分かっています。
ドーパミンが減少することによって、スムーズな動作ができなくなるなど、様々な特徴的な症状が出てきます。
日本でパーキンソン病患者は、およそ1000人に1人。現在、10万人以上の患者がいると推定されていいます。難病の中では、比較的多い病気です。介護現場では、パーキンソン病の方は決して珍しくありません。
50~60歳代で発症することが多いですが、高齢になるほど発症しやすいようです。ゆっくりと進行していく「進行性」の病気です。高齢化に伴い、今後ますます、発病される方が増えると予想されています。
ちなみに、パーキンソン病ではないのに、パーキンソン病のような症状が出る場合、「パーキンソン症候群(パーキンソニズム)」といわれます。例えば、脳血管障害(脳卒中)の後、麻痺の程度はそれほどひどくないのに、小刻み歩行などパーキンソン病のような症状が出る状態を、脳血管性パーキンソニズムといいます。
症状
主な症状として、振戦(しんせん)、固縮(こしゅく)、無動(むどう)、姿勢反射障害があります。これらがパーキンソン病の4主徴といわれています。
振戦(しんせん)
振戦とは、ふるえることです。パーキンソン病のふるえは、安静時振戦といわれ、何もしていないときにふるえます。例えば、イスに座っているときに、手先がふるえたりします。最初は、身体の片側のみがふるえ、病気が進行すると身体の両側や体幹部でもふるえが出現します。
固縮(こしゅく)
固縮とは、筋肉が固くなり関節が動かしづらくなることです。着替えなどで、介助者が関節を動かそうとしたときに、関節の全範囲にわたって、同じような固さがあり動かしにくくなります。鉛の管を曲げているような感覚なので、「鉛管様現象」といわれたりします。拘縮ではありませんので、関節が固まっているわけではありません。自分で動いているときよりも、介助者が動かそうとしたときに、固くて動かしにくいのが特徴です。
無動(むどう)
無動とは、動きがゆっくりになること、少なくなることです。無動と書きますが、動きが無くなるわけではありません。全体的に動作が緩慢になります。介助者が「立ちましょう」と声をかけても、なかなか立とうとせず、「立てないのかな?」とあきらめかけたときに、ゆっくりと立ち上がるといった具合です。手足だけでなく、顔面の動きも少なくなりますので、表情に乏しく「仮面様顔貌」といわれます。
姿勢反射障害
姿勢反射障害は、バランスが悪くなることです。立っているときや歩いているときにバランスを崩して転びやすくなります。まっすぐ歩くときは比較的安定していても、方向転換、横歩き、後ろ歩きなどは、特に難しくバランスを崩しやすくなります。バランスがとれないので、歩くときに一歩目が出にくくなる「すくみ足」や、歩き出しても歩幅が狭くなり小刻みに歩く「小刻み歩行」、また、歩きだした後、前方に突進してしまう「突進歩行」などの症状が出ることもあります。
これらの症状を主として、他にも便秘、排尿障害、立ちくらみ、発汗異常(汗をかきやすい)、睡眠障害、気持ちが落ち込む、うつ症状など、様々な症状が出現します。
ヤールの分類
パーキンソン病の症状の程度を表すのに「ヤールの分類」というものがあります。症状がごく軽いⅠ度から、全面的に介助が必要になるⅤ度まで、5段階に分けられています。
Ⅰ度とⅡ度では、日常生活にあまり支障はありませんが、Ⅲ度から姿勢反射障害が出てきて転びやすくなり、Ⅳ度、Ⅴ度では、日常生活に介助が必要な状態になります。
- Ⅰ度 体の片側のみに症状が出る。
- Ⅱ度 体の両側に症状が出る。
- Ⅲ度 姿勢反射障害が出現する。
- Ⅳ度 起立・歩行はなんとかできるが、日常生活に一部介助が必要になる。
- Ⅴ度 一人で起立・歩行ができない。日常生活に全面的な介助が必要になる。
Ⅰ度からⅤ度まで、十数年かけてゆっくりと進行することが多いですが、進行のスピードには個人差があります。また、早期から適切な治療を受けることで、症状を抑えたり、進行を遅らせることも可能です。
パーキンソン病と杖
パーキンソン病では、Ⅲ度(ヤールの分類)くらいから、バランス障害が出て、歩きにくくなったり、転びやすくなったりします。また、病気が進行するつれて、徐々に前傾姿勢(前かがみ)となり、より歩きにくくなります。
姿勢やバランスを改善し、転倒を防ぎ、安全に歩くためには、杖(T字杖)を使うことが有効です。
パーキンソン病で杖を使うことによる効果
パーキンソン病で、まだ歩ける状態の場合は、杖を使うことで、次のような効果が期待できます。
1.バランスの改善
杖は、支持面を広げ、バランスをとりやすくする効果がありますので、歩行時のバランスの改善に役立ちます。
2.突進を抑える
突進歩行が出現している場合は、杖を使うことにより突進を抑える効果があります。
3.前かがみ姿勢の改善
杖を使い、背すじを伸ばすように意識することで、立位・歩行時の前かがみ姿勢が改善します。
4.腰痛の予防
前かがみ姿勢が続くと、腰痛の原因になります。杖を使って、前かがみ姿勢を改善することで、腰痛の予防になります。
5.転倒の予防
バランスや姿勢を改善することにより、転倒を予防します。
パーキンソン病で杖を使う際の注意点
パーキンソン病で、杖を使う場合、以下のことに注意しましょう。
1.杖の長さは、標準~やや長め
杖の長さの標準的な合わせ方は、立った状態で大腿骨大転子の高さ、もしくは手首の高さ、身長÷2+3cmなど、いくつかの合わせ方がありますが、パーキンソン病の場合は、これらの標準的な合わせ方で合わせた長さ、もしくは、やや長め(持ち手の高さが、やや高め)が適するようです。伸縮式の杖を用い、標準~やや長めの間で、ご自分で持ちやすい長さに調整してください。短すぎる杖だと、前かがみ姿勢が強まります。適切な長さに合わせることにより、姿勢よく歩くことができます。
2.杖をしっかりと地面について歩くこと
パーキンソン病の方で、時折みられるのは、杖を持っているけど、地面につかずに(地面から浮かせたまま)歩いているという人です。これでは、杖の意味がありません。リズムよく、杖先を地面につきながら歩けているかどうか、チェックしましょう。
早めの杖の使用を
パーキンソン病と診断されたら、早めに杖を購入し、杖を持って歩く習慣をつけましょう。
最初にパーキンソン病と診断を受けるのは、まだ日常生活が自立している状態(ヤールⅠ度、Ⅱ度)のことが多いと思います。この時期から、杖を使ってみることをオススメします。
もし、症状が進行し、バランス障害が出てから、初めて杖を使ったとしたら、そもそも杖を使うことに慣れていないので、うまく使えない可能性があります。
まだしっかりと歩けるうちに、杖を使うことにより、正しい杖の使い方を身につけることができますので、将来、バランス障害が出たときに、有効に杖を活用することができるでしょう。
(株)マルトクの杖は、柄が太く、グリップも握りやすい形状です。また、杖先ゴムも大きく、地面についたときに安定感があるので、オススメです。
病気が進行すると、歩きにくくなることにより、活動性が低下し、さらに体力が低下していまいます。まだ症状が軽いうちから、杖を持ってしっかり歩くことで、運動量を確保し、体力を維持・向上し、将来の病気の進行に備えることが肝要です。
監修:徳山 和宏(徳山オフィス代表 理学療法士)
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